古石場(ふるいしば)文化センター(江東区古石場2)で現在、築山秀夫・小津コレクション展「『浮草』と小津安二郎」が開催されている。
同センターでは、映画「東京物語」などで世界的に有名な小津安二郎監督の生誕の地が深川であることから、生前の写真や記録などを展示する「小津安二郎紹介展示コーナー」を2003年に開設。今回、「全国小津安二郎ネットワーク」副会長・築山秀夫さんの協力を得て、映画「浮草」に関連する資料を中心に展示している。
同展のきっかけは、同センターで1月10日から3日間行われた「第8回江東シネマフェスティバル」で最終日に上映されたこと。同作品は、小津監督が戦前製作した「浮草物語」をセルフリメークしたもの。家族をテーマに撮り続けた小津監督の作品の中では、コミカルでラブストーリーの要素が強く、異色ながらも人気の高い作品だ。
展示内容は、貴重な戦前の映画資料やポスター、実際に映画で使用された湯飲みなど。中には築山さんが遺族から譲り受けた愛用品も展示。酒好きで知られる小津監督が愛用していた酒器やちょこをはじめ、初展示となるオーダーメードのスリーピースのスーツとヘリンボーンのツイード・コートなど、小津監督のこだわりやセンスが感じられる品々が並ぶ。
同センター職員の勝冶(かつや)美樹さんは「青春時代に銀幕の大スターだった役者や、当時一世を風靡(ふうび)した名画を懐かしんで立ち寄る人が多い。ただ、昔の日本の空気感はどんなに映画の技術が発達しても出せないもの。その代表格である小津作品を若い人にももっと興味を持ってもらえたらうれしい」と話す。
来場者は60~70代のシニア世代が多いが、ポスターなどのレトロな雰囲気に引かれて立ち寄ったという40代の男性は「古き良き時代の魅力を再発見した気分」と興味津々の様子。当時の面影を残す写真やコレクションなどを、食い入るように眺めていた。
開催時間は9時~21時。1月25日まで。