芝浦工業大学情報工学科の米村俊一教授が昨年10月、小説執筆支援ソフト「ものがたりソフト」を発表した。現在、執筆における「調査」をサポートするインターフェースの開発が進められている。
同ソフトは、2012年から米村教授と同大卒業生で作家の中村航さんと共同で開発した。頭の中にある小説の構想などを部分的に入力すると、「プロット」と呼ばれる大まかな内容をまとめた文章を出力してくれる。
起承転結は一般的に3幕構成でまとめられることから、同ソフトは「フェーズ1」「フェーズ2」「フェーズ3」と3幕に分かれている。各フェーズでは、主人公の名前や物語のきっかけ、試練や状況、解決法などを質問形式で問われる。ユーザーは頭の中にぼんやりと浮かんでいるストーリーや起きる出来事・展開について質問に答えるだけで、ソフトが自動的に整理してプロットに出力してくれる。
米村教授は認知心理学の下もと、同じく作家の中田永一さんに心理実験を行い、思考パターンを抽出。執筆支援システムとしてユーザーインターフェースを設計した。プロの小説家がどんな順番でどんなことを考えるのか、考えるときどのような情報が必要なのか、心理実験を行って洗い出したという。
現在、米村教授は執筆における「調査」をサポートするユーザーインターフェースの開発に取り組んでいる。ネット上で調べた項目を並べ、整理することで執筆中の「調査」部分の効率を上げるもの。
米村教授は「小説が書きたくとも書けない人は山ほどいる。将来はPCではなくモバイル機器で、どこにいてもプロットが作成できるようにしたい。今後1~2年で一般の人も使える形に改良を進め、最終的にはプロットだけではなく小説の執筆までできるものを作りたい」と意気込む。
同ソフトで作ったプロットを基に書かれた中村航さん・中田永一さんの合作青春小説「僕は小説が書けない」は、昨年11月に発売されている。