豊洲文化センター(江東区豊洲2、TEL03-3536-5061)で7月9日、「お客様が選ぶ 学生落語選手権」が開かれた。
同イベントを主催する社会人落語の会「都笑亭(とわいらいとてい)」は1992年、豊洲1丁目に本社移転をしたコンピューター会社「日本ユニシス」の社員7人が年末の社内販売会をきっかけに、落語のテープやCDに手を伸ばしたことで知り合いになり結成。
1994年に「豊洲で働く人と暮らす人の交流の場になる手作りの寄席(よせ)をやろう」とお互い意気投合し、正式に同会を発足した。会の名前は、在勤者と在住者が交差する時間帯が始まる「夕暮れ(トワイライト)」にちなんで付けたという。
平日夕方を基本に木戸銭500円を集めて開く寄席は、今年で20周年の節目を迎えるといい、96回を数える。初回は同センターの和室を会場に、観客は日本ユニシス関係者も含めた37人だったが、徐々に地域からの来場者が増え、1998年からは定員300人の同センター内のレクホールで開催するほどの好評を得ている。これまでの観客動数は延べ1万1008人に達した。
関東近郊から毎回さまざまな経歴を持つ社会人落語家が高座(こうざ)に上がる。現在は年に5回ペースで寄席を開き、うち1回はプロの落語家と学生を演者に招いている。
同選手権は今年で7回目。「若い人にも落語を受け継いでいきたい」「社会人でも落語を続けられることを伝えたい」との思いで年に一度開いている。大学の落語研究会に所属する学生4人が高座に上がり、観客はすべての話を鑑賞した後、一番面白かったと思う演者に一票を投じるルール。
この日は小雨が降る中、18時30分からの開演時には、近隣から75人の観客が集まった。演目は「ちりとてちん」(青山学院大学2年・いかれ亭乱痴気さん)、「二人ぐせ」(駒澤大学3年・三流亭紅能さん)、「元犬」(埼玉大学2年・くるくる亭パー助 さん)、「悋気の独楽(りんきのこま)」(國學院大学3年・若木家女楽さん)。
優勝者は、女性の嫉妬を題材に登場人物をコミカルに演じて見せた若木屋さん。「普段は仲間と演じ、競うことはないので緊張したが、高座に上がると観客が温かく笑ってくれたのでありがたかった」と喜びを語った。
夫婦で10年来、都笑亭の寄席に通っているという東陽町在住で85歳の男性は「学生寄席は初回からずっと楽しみで見に来ているが、回を重ねるごとに学生の演じるレベルが上がっていると感じる。今回は接戦で、際立っている人を選ぶのが難しかった」と目を細める。
同会代表の小林敬さんは「続けて来られたのも、観客がいつも『面白かった』と笑ってくれるからこそ。地元で協力してくれる人や観客たちに、スタッフも演者も後押しされている。もうすぐ100回になるが、今後まだまだ続けていきたい」と意欲を見せる。
次回寄席は9月19日、18時30分開演。