脊髄損傷で一生歩けないと宣告された大学生の杉原紘人(ひろと)さんが富士山登頂へチャレンジする「杉原プロジェクト」が始動し、日本初の脊髄損傷者専門のトレーニングジム「ジェイ・ワークアウト」(江東区木場2)で3月19日、登頂祈願式が開かれた。
プロジェクト実行委員会として、ジェイ・ワークアウト、プロティア・ジャパン、NPO Full Circle Japan、国際せきずい損傷リハビリテーション協会が参加。
杉原さんは高校ラグビー部の試合で脊髄を損傷、「一生歩けない」と医師から宣告を受けた。家族が医療機関を探し、退院後の再歩行を目指し、同ジムで週2回トレーニングを開始。約1年弱で驚異的な回復を見せ、現在はつえでの自立歩行ができるようになった。現在、大学進学を果たし学生生活を楽しんでいる。
同ジムでは、過去、車いすテニスの国枝慎吾選手、オリックス・バッファローズの伊藤光選手もトレーニングを受けていた。オランダで開発され、欧米でトップアスリート、セレブ、スポーツ愛好家に愛用者が多いことで知られるトレーニングマシンを使い、「短時間で効率的な筋力トレーニングを可能にした」という。
脊髄の損傷は、手足のまひや、体温調節ができないなどの自律神経に障害が残るケースが主だが、杉原さんのために、富士山を登りきるためにハードで専門的なトレーニングを始動。杉原さんは「同じ障害で苦しむ人に可能性があるという希望を届けたい」と話す。
アトランタ五輪で体操日本代表を務めた田中光さんもプロジェクトに賛同。「もう歩けないと言われた人がここまで勇気をもって頑張れることは、周囲のサポートが大きな力となっている」と話し、「人間は調子のいい時ではなく、何かあった時に試される。彼のチャレンジを知って、もっと頑張らなければと思う。全面的に応援している。頑張って」とエールを送る。
同ジムでは、「杉原プロジェクト」をきっかけとし、今後、脊髄損傷の再起・チャレンジを応援する社内プロジェクトを立ち上げた。脊髄損傷の周知、回復の希望、車いすアスリートのサポートを行い、パラリンピックに向け障がい者や障がい者スポーツへの関心喚起に貢献していきたいという。